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	<title>ムラソイ | NOVEL ROOM</title>
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		<title>『Fishing Diary #3』</title>
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		<dc:creator><![CDATA[kei]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 06 Apr 2025 08:56:37 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[Fishing Diary]]></category>
		<category><![CDATA[釣り日記]]></category>
		<category><![CDATA[カサゴ]]></category>
		<category><![CDATA[ムラソイ]]></category>
		<category><![CDATA[ホイル焼き]]></category>
		<category><![CDATA[根魚]]></category>
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					<description><![CDATA[　風がまだ冷たい。　春の気配は少しずつ近づいてきているはずなのに、海辺を走ると、冬の名残が肌を刺すように吹きつけてくる。 　それでも朝の海には、いつものようにポツポツと釣り人の姿があった。　防寒着を着込んで、じっと波を見 [&#8230;]]]></description>
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<p>　風がまだ冷たい。<br>　春の気配は少しずつ近づいてきているはずなのに、海辺を走ると、冬の名残が肌を刺すように吹きつけてくる。</p>



<p>　それでも朝の海には、いつものようにポツポツと釣り人の姿があった。<br>　防寒着を着込んで、じっと波を見つめながら竿を握っている。誰も声を出さず、ただそれぞれの釣りと向き合っているようだった。</p>



<p>　車の窓を少し開けると、潮の匂いがふわりと入り込んだ。</p>



<p>　「そろそろ、水温も少しは上がってきたかな」</p>



<p>　とはいえ、まだ浅場に魚が入ってくるには早い気がする。今日のような日は、やはり深めのポイントを探るのが良さそうだ。</p>



<p>　そう思いながら、海岸線をゆっくり走る。<br>　風裏になる地形を探しながら、テトラが積まれた場所を見つけると、車を止めた。</p>



<p>　潮はそれほど強くない。波も穏やかで、立ち込む必要もなさそうだ。何より、ここなら深さもあって、根魚が潜んでいる可能性が高い。</p>



<p>　ゆっくりと支度を整える。<br>　今日はシンプルに、ブラクリ仕掛けにオキアミをつけての釣り。狙うのは、テトラの隙間に潜む根魚たち。</p>



<p>　仕掛けを静かに落とす。<br>　スルスルと沈んでいき、オキアミが暗い海中に溶けていくのを感じる。</p>



<p>　……反応はない。</p>



<p>　潮が動いていないせいか、エサ取りも来ない。<br>　テトラの隙間を変え、落とす場所を少しずつずらしながら、丁寧に探っていく。</p>



<p>　数分が経過した頃。</p>



<p>　コツ……。</p>



<p>　わずかに、竿先がピクリと動いた。<br>　神経を研ぎ澄ませ、しばらく待つ。すると、次の瞬間──</p>



<p>　ググッ！</p>



<p>　竿先がぐっと下に引き込まれる。反射的にアワセを入れると、ずしりとした重みが伝わってきた。</p>



<p>　「……きた」</p>



<p>　根に潜られないよう、強めに巻き上げる。<br>　それほど暴れないが、しっかりとした抵抗感。この鈍い引きは、たぶん──</p>



<p>　海面に浮かび上がったのは、黒っぽい魚体。<br>　目が大きく、どこか鋭い雰囲気を漂わせたその姿。</p>



<p>　「ムラソイだ」</p>



<p>　なかなかのサイズ。20cmは超えている。<br>　厚みのある体に、がっしりとしたヒレ。テトラの中でじっと息を潜めていた獣が、ついに飛び出してきた。</p>



<p>　「いいね。これは嬉しい一匹」</p>



<p>　針を丁寧に外し、バケツの中にそっと入れる。<br>　茶色がかった魚体が、日の光を受けてきらりと光った。</p>



<p>　仕掛けを打ち直す。<br>　潮の動きに合わせて落とし方を微調整しながら、再びテトラの影を狙う。</p>



<p>　すると、またすぐにアタリがきた。</p>



<p>　今度はもう少し軽めの引き。だが、しっかりとしたトルクを感じる。<br>　上がってきたのは──</p>



<p>　「カサゴ、やっぱりいたか」</p>



<p>　ムラソイほどのサイズではないが、ぷっくりとした体形で美味しそうな個体。<br>　このあともう一匹、同じくらいのカサゴが続けて釣れた。</p>



<p>　バケツの中で、ムラソイとカサゴが静かに泳いでいる。<br>　海の色をそのまま映したような魚たち。ゆっくりと呼吸をするその姿を見て、ふと気が緩む。</p>



<p>　「これだけ釣れれば、もう充分だな」</p>



<p>　冷たい風の中、じんわりと手が温まっていくような気がした。<br>　さて、次はこの魚たちを、どうやって一番美味しく食べようか。</p>



<p>　家に戻り、キッチンに魚を並べる。<br>　ムラソイ一匹、カサゴが二匹。どれも身がしっかりしていて、見るからにうまそうだ。</p>



<p>　「今日は……全部、あれでいこう」</p>



<p>　迷いはなかった。<br>　この魚たちは、あの調理法がいちばん似合う。アルミホイルに包んで、塩とバターでじっくり焼き上げる──それだけで、素材の味が最大限に引き出される。</p>



<p>　まずは下処理から。<br>　まな板にムラソイを置き、包丁の背でザッザッと鱗を落としていく。思ったよりも硬く、骨ばった手応え。鱗が弾け、キッチンに軽く散る。</p>



<p>　エラと内臓を取り除くと、ぷりっとした白身が現れる。<br>　腹の中には、うっすらと脂ののった身がたっぷり詰まっていた。</p>



<p>　同じくカサゴも捌いていく。こちらは少し柔らかく、手慣れた動きで処理が進む。</p>



<p>　下処理を終えた魚たちをキッチンペーパーで丁寧に拭き取り、塩をまぶす。<br>　全体にまんべんなく、そしてお腹の中にもしっかりと。バターの香りと塩気が馴染むように、数分だけ置いてなじませる。</p>



<p>　「よし、包もうか」</p>



<p>　アルミホイルを広げ、その中心に魚を一尾ずつ乗せる。<br>　その上から、厚めに切ったバターを乗せ、香り付けに薄くスライスしたにんにくを一枚。少しだけ白ワインを垂らし、そっとホイルを閉じる。</p>



<p>　包みを三つ、グリルに並べると、静かな音が立ち始めた。</p>



<p>　ジュウ……</p>



<p>　バターが溶け出し、魚の身から染み出した脂と合わさって、ホイルの中でぐつぐつと踊る。<br>　鼻をくすぐるのは、焦げかけたバターの香ばしさ。そしてほんのりと漂う磯の香り。</p>



<p>　「うわ、もう絶対うまいやつ」</p>



<p>　グリルの扉越しに立ち上る湯気を眺めながら、思わずにやけてしまう。<br>　数分後、火を止めてホイルを開くと、湯気と一緒に芳醇な香りがふわりと立ちのぼった。</p>



<p>　皮がわずかに焦げ目を帯び、バターが金色に泡立っている。<br>　箸を入れると、ほろっと身が崩れ、湯気が一瞬にして広がった。</p>



<p>　「いただきます」</p>



<p>　まずはムラソイから。<br>　淡白な中にも深みのある身が、バターと塩の風味でさらに引き立っている。しっとりとした食感に、にんにくの香りが後から追いかけてくる。</p>



<p>　カサゴは、さらに繊細だ。<br>　やわらかくてふっくら、舌の上でほどけるように溶ける。脂がホイルの中で回っていたせいか、どこを食べてもじんわりと旨味が広がる。</p>



<p>　口に入れるたび、思わず目を閉じたくなるような幸福感。</p>



<p>　「……これは正解すぎたな」</p>



<p>　冷たい風の中で釣った魚が、こんなにも温かい一皿に変わる。<br>　あの瞬間、竿先がググッとしなったときの感触が、じわりと蘇る。</p>



<p>　風はまだ冷たい。<br>　けれど、今は部屋の中にいて、目の前には熱々の塩バター焼き。</p>



<p>　釣れた魚を食べることが目的じゃない。<br>　海と向き合い、魚と出会い、その命をいただき、自分の手で一皿に仕上げる──それが、僕にとっての釣りだ。</p>



<p>　最後のひと口を口に運ぶ。<br>　塩とバターの余韻を舌に残しながら、そっと息を吐いた。</p>



<p>　「さあ、次はどんな魚に出会えるかな」</p>



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